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「唐山大地震」母の悲痛な叫び

フォン・シャオガン監督
シュイ・ファン、チャン・チンチュー、リー・チェン、チェン・ダオミン出演
2時間15分、2010年制作
中国映画、松竹配給


引き裂かれた絆、32年の時を経て再び重なりあう家族の思い、
試写が始まる前唐突に壇上から男の声が。
宣伝を担当している彼が言うには、この映画は催涙弾映画と呼ばれているなどと説明している。
そんな言葉を冷ややかに聞き流しているうちに、作品が上映され始めた。

1976年、北京近くの唐山市に住む、ダーチアンとユェンニー夫婦、
二人にはドンとダーという女男の6歳になる双子の子供がいて、4人はとても仲の良い家族だ。
一家の団欒、ダーが食べたトマトをドンは欲しいと母のユェンニーにねだるがもう無い、
明日買ってあげるとなだめすかす。
その夜、大地震が襲ってくる、偶然両親は外に居たが、子供達は部屋で寝ている。
母は必死に二人の元へ行こうとするが、既に5階建て程のビルは崩れかけている。
危ないと母を庇った父に何かがぶつかり倒れ息絶える。

夜が明け、被害の大きさが明らかになる。母は瓦礫の中に子供達がいないか探し回る、
すると救助している者達から子供がいると声があがる。
しかし、事態は深刻、二人とも瓦礫の下、それも両端にいて、
一方を持ち上げるには片方に力が掛かり、一人しか助ける事が出来ないのだ。
救助している者達からどちらを助けるか、直ぐ決めなければ瓦礫が崩れ落ちると決断を迫る声が。
二人とも助けてと何度も何度も頼むものの、最後には切羽詰まって力なく男の子をと。
朦朧とする意識の中で二人の子供達もその声を聞いていまう。
瓦礫から二人は出され、一方は片腕を失う。
もう一方は死体置き場で父親の横に置かれる。
雨と喧騒の中、
死体置き場に置かれた子供は息を吹き返えす。
収容所でドンは養女となって違う町で育てられる。
養父母には記憶を失った事にし、一切の過去を封じ込める。

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それから歳月が過ぎ、
母に育てられたダーは事業家として成功し嫁ももらい
母に新しい家を買ってあげようとするが,
母は今のままが良いと言うばかりで受け付けない。
彼女は震災後に移り住んだ手狭な家で失ったモノを噛み締めながら生活することが供養だと思っている。

一方ドンは医大に進みそこで知り合った先輩と恋に落ち妊娠するも、
相手が中絶を望むため別れることを決意、
大学もやめ、誰にも言わずシングルマザーとなり子供を育て、
やがて知り合った外国人の弁護士と結婚しカナダで生活する。

流れるように淡々と進んでいた家族のその後は
2008年の四川地震で重なりあう。

四川地震を知った双子の兄弟はいてもたってもいられず救援に駆けつける。
二人は唐山救援隊という名に引きつけられ、姉が名乗り出る。
母の家へ足を踏み入れたドンにユェンニーはそっとトマトを差し出す。
32年のブランクが無くなる瞬間だ。
ユェンニーは我が子ドンにひたすら謝り続ける。
自分の発した一言の重さを責め苛み、
地震後の彼女の心は砂漠となりどんな潤いも受け付けないでいたのだ。
ドンも自分が拘っていた言葉の意味を考え直し、ユェンニーを許す事が出来たのだ。

今年上半期一番の映画になると思う。紹介通りの催涙弾映画だ、是非観た方が良い。
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by asat_abc | 2011-02-26 23:45 | 映画_新作

「ショパン 愛の旋律」美しい音楽の調べ

イエジ・アンドチェク監督
ピョートル・アダムチク、ダヌタ・ステカ出演
2時間6分、2002年制作、なんと9年前の作品なんですね!
ポーランド映画
ショーゲート配給

これぞ音楽映画、全編に流れる調べは心地よく、油断すると夢の世界に誘われそう。
でも監督はそれを察知してか、ガなり声を所々に入れてそれを阻止する。
だが、心地良さに打ち勝てなくて、隣の人はただひたすら気持ちよさそうな寝息を立てている。
これぞ至上のしあわせ?
音楽映画として美しい旋律をじっくり楽しむのも良いけれど、
ジョルジュ・サンド婦人との恋愛ストーリーとしても面白い作品になっていた。

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1830年ポーランド、
帝政ロシアの圧政下では自由な創作活動などショパンにはできなかった。
厳格ながら愛情深い父親はショパンにパリへ行く事を勧める。
パリでフランツ・リストと交友、リストはショパンの曲を、社交界で演奏しPR、
ショパンの名声は高まっていく。
この辺は時間の関係か、さらっと流している。
個人的にはもう少しリストとの関係を知りたかった。

c0146834_855478.jpg当時、社交界の中心にいたのは、小説家のジョルジュ・サンドだ。彼女は今で言う肉食系女子の典型、それも超が付くほどだ。15歳も年上だというのショパンを猛烈にアタックする。こうなればショパンはいくら抵抗したところで所詮はヘビに睨まれたカエル、ライオンに追いかけられたウサギ、餌食になるだけだ。サンドの手練手管にズッボリハマってしまったショパンは彼女と8年間行動を共にする。



この期間にショパンは数々の名作を作曲しているから、
ある意味サンドがショパンを育て上げといって良いかもしれない。
逆にサンドの創作活動は不毛の時期だったらしい。
それどころか、サンドの二人の子供とショパンとの板挟みになり、
二人の間にはやがて別れの時期が来ることになる。
上の子供は男でショパンと数歳しか変わらず、
長男は二人が男女の関係で有ることを知ると激しく嫉妬し始め、母を取り返そうとする。
下の子は女、初めは小学生位の幼い子だったが、
成長し思春期にはいるとショパンを慕い始め母と争うようになる。
そしてショパンとサンドの間には修復出来ない溝が出来てしまう。
そんなストーリーだ。


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この映画が史実に忠実なものか気になり、調べてみた。サンドが15歳も年上というのはオーバーのようだ。
調べた本では6歳年上だった。
たが、長男との確執、ソランジュという娘がショパンにアプローチしたというのは本当らしい。
その頃になると、
サンドの屋敷でショパン、ソランジュ組VSサンド、長男組の激しいバトルが繰り広げられたようだ。

パリ社交界で二人の仲が話題となり、逃避行のようにマジョルカ島へ行くのだが、
避暑地として有名なマジョルカも彼らが行った年は天候不順で、
更にショパンの結核のせいで、島の辺鄙な所へ追いやられ、ショパンの病状が悪化、
寿命が縮まったと言われている。結局ショパンは39歳という若さで亡くなってしまった。
劇中、嵐の日がある、サンド親子三人は外へ出かけていた時に突然物凄い嵐がやって来る。
帰りを待っていたショパンは一人取り残されたと思い込み悲観にくれ
気を取り乱さんばかりの様子だったようだ。(誰が記録に残したかったわからないけど。)
ようはなんやかんやいいながら、草食系男子ショパンはサンドを頼っていたわけです。

この頃の芸術家は誰かの庇護を受けている。
ショパンの場合はサンドがバトロンだったという事だ。
だからサンドと別れるということはバトロンと別れるという事でもあり
その後の暮らしは苦しくなり最後は実家の姉に看病を頼み、
心臓を実家に運んでもらっている。(どんな風に?)

今度は美しい旋律を聞きながら、暖かな日差しを受けながら眠りに尽きたいものだ。


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by asat_abc | 2011-02-25 18:49 | 映画_新作

日本公開時の題名は「生き残るための3つの取引」

リュ・スンワン監督、
ファン・ジョンミン、リュ・スンボム、ユ・ヘジン出演

スニーク試写会で観た時に、まだ日本公開時の題名が決まっていない
と言っていたような気がする、韓流作品。
「不当取引」が案のようだが。


韓国の全国民に衝撃を与える少女連続殺人事件が発生してる。
犯人逮捕に失敗しつづける警察庁、
大統領が直接、事件に介在しなければならないほどの大事になってきた。
捜査途中で、有力容疑者が死亡する事件が発生するにいたり、警察庁は暴挙に出る。
ニセモノの犯人を作り出して事件を強引に幕引きするという案だ。
この辺を速い展開で、フラッシュで見せる、これはあくまでも前提の提示だ。
ここからが映画の始まりで、この事件を担当したのはチェ・チョルギ(ファン・ジョンミン)だ。
学歴が警察大学出身ではないという理由で、昇進遅れている。
昇進を餌に、事件担当をのまされる。
チョルギはヤクザまがいの実業家チャン・ソック(ユ・ヘジン)を利用して、
無理やりニセ犯人を作り出し、事件を終結させる。
チョルギは勘を頼りに犯人を作り出した、ただ、証拠はない、
なくても強引につくればいいやと、ソックに証拠を作らせてしまうのだ。
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その代わり,ソックはチョルギに不正な不動産取引に目をつぶらせてしまう。
それによって、ジュヤン検察官が癒着している不動産会社社長と対立してしまう。

ところが、この事件を担当したのはジュヤン(リュ・スンボム)検察官。
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ジュヤンは、調査の過程で、チェ・チョルギとチャン・ソックの間に
なんらかの取り引きがあったことに気づき、
そこからジュヤンとチョルギの壮絶なバトルが始まる。
不動産取引の前の借りがあるから ジュヤンの追求は激しい。
こんなストーリーだ。

兎に角展開が早い、出だしからポンポン、ポンポン場面が変わっていくので、
始めのうちはストーリーを理解いするのでいっぱいいっぱい。
登場人物も最初にすべて紹介してしまおうと、フラッシュフラッシュ!!

中盤からようやく複雑にもつれた糸がほどけてくる。
ジュヤンの追求を交わせ切れないとしったチョルギはジュヤンにわびを入れる。
その際に、裸になるのだ。
この辺は風習の違いか、驚いたところの一つだ。

それと、チョルギにはノンキャリアだからこそ彼を慕う仲間たちがいる。
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特に弟分のような部下がいるのだが、その部下がチョルギの事を心配するあまり
逆に知ってはならないことを知ってしまう。
その為、最後の憐れな結末へと突っ走ってしまう。
後半も、一気呵成に展開してゆく。
クリアな頭で見ないと、ジェットコースターに乗って、
きゃあきゃあ
言ってるうちに終わってしまう、作品だ。




追伸、この作品の邦題が決まったようです。

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by asat_abc | 2011-02-23 00:27 | 映画_新作

「闇の列車、光の旅」 貧困からの脱出 南米映画

ケイリー・ジョージ・フクナガ監督
エドガール・フローレス、バウリナ・ガイダン出演
1時間48分、2009年制作
アメリカ/メキシコ映画、日活配給


最近ある映画館の会員になってから、米英仏日以外の国の作品を観る機会が増えた。
実に色々な国で映画が作られていて、そのテイストは様々だ。
ただ、日本に紹介される作品の場合、時事的テーマを扱った知的水準が高いものが多く、
観るときには覚悟が必要な場合が多いというのが私の印象だ。
知的水準が高いということは私のようなミーハーには理屈っぽく単純に楽しめる作品が少ないので、
寝ないで最後までちゃんと観るぞ!
という心構えが必要だ。
それに映画評論家の方々が必見として薦めてくれる作品が多いのだが、そ
のような作品で満足出来た映画にほとんど出会った事がない。
非常に多くの作品をみている評論家の人達の評価だが数多く観ているが故に
一般的な人達の評価とかけ離れていると思える事が多くある。
その中で、この作品はミーハーにもわかりやすく感動出来る作品で、
更に奥が深いから口うるさい人の評価にも耐えうる映画だ。


南米の国は貧しい。
主人公の少女サイラと少年カスペルは互いに貧しい環境で育っている。
少女は父親、叔父と三人でホンジュラスから貨物列車の座席ではなく列車の上にのって
同じ思いの人達とアメリカへの密入国を図る。
少年はその密入国を図る人達から金を巻き上げようとする地域ギャングの一員。
ギャングのボスは密入国者の一群から可愛いサイラを見つだすと、みんなの前で犯そうとする。
その行為を少年はボスとの過去の経緯から許せず、ボスを刃物で殺害し、結果サイラを助ける。
ギャングの裏切り者に対する報復は凄まじい、
カスペルは密入国を企てる人達と行動を共にするようになるが、
彼等に危害が及ぶ事を避け、早朝こっそりと列車から降りる。
だがそれに気づいたサイラも一緒に降りてしまう。
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二人の出会いが衝撃的だっただけに、
サイラの方が当初やや一方的にカスペルに思いを寄せるし、その理由もわかるようになっている。
同じ年頃の男女、それでなくともくっつくのは必然だ。
二人はギャングの追っ手をかいくぐりながら、一緒にアメリカへ向かう。
二人に明るい明日は来るのか?
こんな感じの物語だ。

一般的に言われるのは、
明るい時代は悲劇的な結末が多く、暗い時代は明るい結末が多いと。

2人はカスペルが昔世話になったことのある女主人をたよる。
だが、その女主人は既にギャングの息がかかっており、彼等の脱出ルートの先には
ギャング達が待ちかまえていることが徐々に明らかにされ、スリルとサスペンス感が高まってくる。
二人は待ち構えていることを察したのかそれとも偶然だったのか、寸でのところで難を逃れる。
そして難民用の教会に避難するのだが、そこで悲しい事実を知ってしまう。
サイラの父と叔父はもう少しのところで国境警備員に見つかり、逃げようとした父は
列車から落ち轢かれ死んだ事を。
叔父は捕まりホンジュラスへ強制送還、また昔の希望のない暮らしに逆戻りだ。

この頃になるとカスペルもサイラの明るい前向きな性格の虜になって、
必死に彼女を慰め、アメリカへの密入国に明日への希望を見つけだしている。
そしてもう向こう岸はアメリカだというところまでたどり着く。
向こう岸へ渡るには一人づつ橋渡し役の手助けが必要だ、
先にサイラが渡っている時にギャング達にカスペルは見つかる。
必死に逃げるカスペル、川を渡りながらも気が気でなく、川を戻ろうとするサイラ、
しかしカスペルはギャング達の手にかかる。
それも彼が可愛がっていた弟分の少年にだ。
こうやって、また一人チョット悪だった少年が本物のギャングになっていくのだ。

サイラの願いもむなしく、カスペルは殺され結局アメリカへ渡る事が出来たのは彼女だけだ。

彼女は父のアメリカでの家族に電話をかける。
電話の向こうでは彼女を歓迎するような明るい声が聞こえる。
映画はここで終わる。


サイラと父親との関係は冒頭明かされている。
父親はホンジュラスへ彼の家族であるサイラを迎えに来たこと、
アメリカでサイラの母親ではない女と家族をもち、赤ん坊を含め数人の子供がいること、
子供の頃の父親しか知らないサイラは父親に余り愛情を感じていないことなどなど。
だがアメリカへはもう一度密入国で戻らなければならないというのに
わざわざサイラを引き取りに来るという父親の行為は尊い。
一般的に密入国が死に直結するほど危険な行為という認識もなかった。
更に、南米の国々の人達が命をかけてまで密入国したいという気持ちを正しくは理解できていない。
このような映画を観る度に、日本という国の良さを実感する、
それと同時にこのままで良いのかという不安も感じるのだが。
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by asat_abc | 2011-02-19 09:31 | 映画_新作

「ヒアアフター」雑感

クリントン・イーストウッド監督
マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス出演
2010年、アメリカ、WB、129分
原題:hearafter

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もっと激しいパッションの映画と思っていたら、
小川のせせらぎのような心に少しづつ染み込んでくる物語だった。


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ジョージ(マット・デイモン)は霊能者だったが
今は工場勤務の工員、
彼のタレントは本物だが、彼の本当の能力を知ると怖がり離れていく。
料理教室で知り合った女性と仲良くなれそうだと思ったのも束の間、
能力を知られ、せがまれて彼女を見てあげると
見てはいけない過去まで見えてしまい、
結果彼女は去っていってしまった。
失意のジョージは大好きなディケンズの小説の地、ロンドンへ旅立つ。





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マリーは東南アジアでバカンスを楽しんでいた時巨大な津波に遭遇し一度は脳死状態になり、その後現世に戻ってくる。
だがそれからというもの、その時の経験がフラッシュバックのようによみがえり邪魔をする。その悩みを周りの人間は解ってくれず孤立化し、テレビコメンターの仕事から降ろされてしまう。彼女は自分が体験した事件に関わる本を出筆し、ロンドンのブックフェアへ向かう。



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マーカスは双子の弟、二人はとても仲が良かったが、突然兄が交通事故で死んでしまう。
それからというもの兄に会いたいという想いが募るばかり里子に出された先でも誰とも馴染まず、
霊能者を探し兄との交信を願うが紛い物ばかりだ。


c0146834_2091164.jpgそんな三人がロンドンで出会う。ブックフェアに来ていたマリーを見つけたジョージは本を購入し握手してもらうことで彼女の体験が本物かを確かめ、そして確信する。その時マリーも彼からただならぬものを感じる。
マーカスはネットで見たジョージを見つけ兄との交信を頼み願いが叶う。
兄との交信で彼が得たものは、今の人生すなわち「生」を大切にするということだった。

そしてラスト、
ジョージはカフェテラスでマリーを待つ。
二人ともその待ち合わせはまるで必然の出来事のように。

ラストシーンがとても重要だというのに感動的な言葉で締めくくれない。
2人の経験は他人には理解不可能な世界、二人は既に共犯者のような関係なのだが、
だからといって最後に未来を予感させるラブシーンまで用意したあったのは蛇足だった。

イーストウッド作品では可もなく不可もなくという出来だと思う。

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by asat_abc | 2011-02-14 18:31 | 映画_新作

「トイレット」は日本文化の象徴?

荻上直子監督
もたいまさこ、ポール・ラッド、オーウェン・ウィルソン、ジャック・ニコルソン出演
2時間1分、2010年公開
ソニーピクチャーズ

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荻上監督作品は「メガネ」「カモメ食堂」そしてこの「トイレット」で三作目だがこの作品が一番好きだ。
但し、好きのレベルは余り高くない。
独特の世界観がありマニア向けなのだろうと思うし、
この作品を観る迄は自分は彼女の世界観に馴染めないとさえ思っていたが、
トイレットで考えは少し変わったかも知れない。

時は現代、場所はカナダの地方都市、三人の兄弟が母の葬儀をしているところから始まる。
物語はガンダムオタクの次男の視線で語られる。
兄はピアノの才能があるがパニック症候群のせいで自宅静養中、
妹はタカビーな性格の大学生だ。
あと一人、おばあちゃんが日本からやってきている。
父親はいないし、説明もない。
お母さんが残してくれた家で四人が暮らすその姿を、監督が独特のテンポで描く。
次男は何の研究をしているかわからないが、研究所勤務、一家で唯一の勤め人だ。
朝おばあちゃんといつもトイレでかち合う。
おばあちゃんはトイレから出ると必ず深い溜息をつく。
その訳を知りたがる次男。
同時におばあちゃんと自分が本当に血が繋がっているか訝しがっている。
DNA鑑定は三千$、大好きなガンダムのプラモデルも三千$、
我慢してDNA鑑定を依頼する。その結果は血の繋がりなし!
しかしよくよく調べると、調査した毛髪は妹のもの、実は次男だけが血の繋がりが無かったのだ。
同時進行で長男が母親の形見のミシンの使い方をおばあちゃんから教えてもらい、
スカートを作り、それを身にまとい再びピアノ演奏する意欲が湧いてくるとか、
妹は思いを寄せる男性が出来、良い仲になっていくが見掛け倒しの奴ということがわかるとか、
そんな話がおばあちゃんをかなめに進んでいく。
バラバラだった兄弟はおばあちゃんの手料理と暖かさで家族を再生していく。
それを見届けるかのように、おばあちゃんもあの世に旅立ってゆく。
ところで次男が
おばあちゃんはトイレから出ると必ず深い溜息をつく
ということに行きついた答えは、日本式のトイレと違うということ
日本式はシャワートイレで使用感が満足できなかったから?
自分が下した回答を実感しての、ジ・エンド。

「メガネ」ののっぺりとして淡々とした展開とは違い、
小ネタのユーモアが一杯でストーリーの起伏もそれなりにあり、
楽しい作品でした。
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by asat_abc | 2011-02-13 08:23 | 映画_新作

「冷たい熱帯魚」雑感から

園子温監督
吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり出演
日活配給、2時26分

園子温監督の世界に釘付けにされた。

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ネタは事実から拾い上げ 、エッセンスだけを映像化したというが、
ベースとなる事件がグロいせいで気色悪すぎ好みのツボにはハマらなかった。
だが、気がつけば2時間26分が過ぎていた。


今回はベースとなった事件と出演者についての雑感を。
事件は1990年代前半猟奇殺人事件として世間をかなり騒がせた事件、
うっすらと記憶に有るものの定かではない。
時はバブルがはじけて直ぐ、多くの経営者は金策に困り始めていたころ。
そんな頃、店を経営していた夫婦がとんでもない事件をひきおこした。
男はペットや猛獣の扱いにかけては天才的で、ブリーダーとしての腕は非常に優秀だった。
また、人間心理を読むことに長けており、ヤクザのような風体とは裏腹、
独特なユーモアと巧みな話術で人々をひきつける。
この人物の役をでんでんが演じていた。
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妻は、寡黙だが、気が強、く金銭管理能力にも優れていた。
殺人現場に居合わせばかりでなく、遺体の解体にも携わり、手馴れた作業だったという。
さてこの二人の経営方法はと言えば
犬が産まれたら高値で引き取る と謳っておきながら、犬のつがいを法外な価格で販売、
子犬が店に持ち込まれると、難癖を付けて値切るというもの。
挙げ句、その手口が通用しない客は殺してしまう、というものだ。
しかも殺し方が残忍、「ボディを透明にしてしまう」というもの。
遺体を解体するのだ。解体した部位は骨・皮・肉・内臓に分けられた上、
肉などはから揚げ大に切断、骨はドラム缶で灰になるまで焼却される。
それらは全て山林や川に遺棄された。
遺体を埋めても骨は残るが、焼却してしまえば、ボディは透明になっちまい、
証拠は何も残らないと言うわけだ。
遺体はそのまま焼くと異臭が発生するが、骨のみだけを焼却すれば大丈夫、
映画ではにおいなのか最後まで焼けようになのか、焼く際に醤油をかけていた。
燃えカスとから揚げ大の肉は川に捨てて魚のエサにしてしまい、すっかり何もなくなるのだ。

観るに耐えがたかったのは、その解体作業現場。
夫婦は和気あいあい、鼻歌混じりにまるで魚を捌くように仕分けするのだ。
血糊がべっとり、映像を観ていても臭ってきて具合が悪くなりそうな場面を
でんでんと黒沢あすかが楽しんでやっている。
「いくぞ〜、愛子」
「あいよ〜、あなた」
って具合にまるで魚を捌いているかのような風景は、調べると実際の事件のコピーであるようだ。
グロの方は調べれば調べるほど、かなり事実に忠実らしい。


監督が想像を加えたのはエロの方のようだ。
特に黒沢あすか演じる経営者の妻役は出色だ。
監督の園子温氏も、「黒沢あすかでなければ村田愛子役は成立しなかった」と、
彼女を称えている。
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妖艶だが裏側が透けてみえ良い人でないことは直ぐわかる。
村田愛子は、一見エスなのだが 実は どエムで強い者の隷属物になりたい
という性癖癖のある女の設定だ。
だから、でんでん演じる村田がヤバくなるとヤクザの用心棒とも寝たりするし、
主人公が村田を殺してしまうと、主人公の言いなりになって、
村田のボディを透明にしてしまおうとする。
その際、主人公に殺され掛かっているというのに、
全身を血で真っ赤に染めながら少女のように無邪気に愛を請い
恍惚然とした顔は、不気味だが、清らかさを感じた。
「下着姿にちょっと血が付いて微笑んでいる彼女がとてもエロティックだった。
思わず血の量を増やしました。血がついた黒沢さんは魅力的でエロティック。
そして本当に美しかったです」と園子温監督に言わせしめている。

黒沢あすか、アッパレな女優さんである。
もう少し若いときに出会いたかったものだ。

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観た後、黒沢あすかさんの画像を探した。
それを見てビックリ!
映画の顔とまるで違う、二度ビックリである。
演じるとはここまで姿を変えてしまうのか、
若い女優には吹っ切れない逞しい女優道を追う姿を感じた。
私の注目女優にしっかりはいってしまった。

ストーリーも忘れないうちにしっかり記載しなければ。
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by asat_abc | 2011-02-10 22:42 | 映画_新作

「オカンの嫁入り」雑感

呉美保 監督
宮崎あおい、大竹しのぶ、桐谷健太出演
2010年、110分、角川映画
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二人きりの母と娘、父親は娘が生まれる前に死んでしまった。
母はそれ以来、娘一番で生きてきた。
その母ようこは娘月子に相談もなく結婚相手を連れてきた。
ケンチャンといい、年は三十歳でようこより一回り以上若い、それに金髪のリーゼントだ。
当然月子は大反対、だがこれには訳があったのだ。
ようこの余命は一年、悪性腫瘍が体に転移していて手術できない。
月子はようこが貧血で緊急入院した病院の医師からこの事実を知らされる。
当然のごとく、母と娘は和解し、ようこは憧れの白無垢を着て結婚する。

あともう少しばかり、月子が電車に乗れなくなったストーカー事件のこととか、
ケンチャンの悲しい過去とかが有るものの、基本的なストーリーはこれだけだから、
日本を代表する名女優二人があとを任されたといって良い。

大阪人情噺は、残念ながら劇的な何かを生み出すことはなく、
いつもの勝手な論理を振りかざす大竹の優勢勝ちといった感じのまま終わってしまったという印象だ。
唯一、大竹が子供の宮崎あおいに不束な母でしたがと切り出す衣装合わせのシーンが
涙を誘う感動の場面だ。
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by asat_abc | 2011-02-08 07:00 | 映画_新作

「ちょんまげプリン」の出来にアッパレ

中村義洋監督
錦戸亮、ともさかりえ出演
108分、2010年
原作は 荒木源の小説(小学館文庫)


中村監督の作品で好きなのは「アヒルと鴨とコインロッカー」。
その作品の最後のオチに、やられてしまった。
それと比較すると素直でわかりやすく、ストレートに感動できる作品だ。
これから観るなら、年上の彼女あるいは年下の彼氏と一緒だとより楽しめるでしょう。

ともさかりえがとても魅力的な働くお母さんを演じていた。
彼女、評価以上に良い役者さんかもしれない。


ある日道端に武士の格好をした若者がいた。名を木島安兵衛という。
実は彼、江戸時代から自覚のないままタイムスリップしてしまったのだ、
知り合ってしまったのは保育園児の友也とその母遊佐ひろ子。
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いきがかり上、安兵衛はその遊佐親子の元に居候する事になる。
安兵衛は遊佐親子の役に立つようにと家事につとめ、料理の腕を磨く。
いつしか彼は家族の要になって三人は本物の家族以上の関係になったと思ったのも束の間、
ケーキ作りの腕が認められた安兵衛はケーキ屋さんで奉公し始めるとすごい働きバチになってしまい、
やがて親子との関係はギクシャックしてしまう。
でも友也が安兵衛を慕い三人で一緒に過ごしたいという想いが伝わり、
安兵衛も遊佐親子との暖かい ひとときがかけがえのないものだと気付く。
そして、ハッピーエンドと思っていたら、
安兵衛は江戸時代へ再びタイムスリップという別れが突然やってくる。

ここでハッピーエンドにするほど、流石に都合の良い物語にはできなかったということだろう、
観るものとしても
歴史を歪めてはいけないという気持ちが働き、
妥当な落としどころだ、という思いでみていた。
でも悲しいエンドだ!

最後のオチは安兵衛が江戸時代に戻って和菓子屋さんを始め、
その痕跡をぷりんという形で現代に残していたと遊佐親子が気づくというところ。

武士がすむ時代も就職難、奉公したいと願っても職はない、
その思いが現代で働き蜂にさせた理由なのだが、
そんなに焦ることはない、条件さえ妥協すればそれなりに勤め先があるはず、
それよりはよっぽど重要なものが有る。
それを見失わないようにしないと人生自体を見失うよ
というメッセージは勝手に自分が感じただけか?

お手軽に楽しめ、かなり感動出来る映画だ。
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by asat_abc | 2011-02-08 01:12 | 映画_新作

ネタバレ「ブローン・アパート」

シャロン・マグアイア監督
ミシェル・ウィリアムズ、ユアン・マクレガー出演
2008年、イギリス、100分

911を思わせるテロで最愛の子供を失った一人の女性の再生の物語。
映画紹介には、
情事の午後に息子が死んだ。爆破事件に巻き込まれて・・・・。
欲望と心を引き裂く、愛と裏切りのサスペンス、
と書いてあった。
その言葉に惹かれて観にいったのに、中味はテロ事件で失った子供に対する悲しみと痛みから
どう再生するかというドラマだった。
紹介文にまんまとハメられました。


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目に入れても痛くないと思えるほど四歳の可愛い子供を溺愛する若妻、
だが爆弾処理班の夫は仕事と子供に興味を示すばかりで自分の事はかまってくれない。
その寂しさで、ついゴシップ記者と情事にはしる。
その男と情事を重ねているまさにその時、サッカー場で爆弾テロが起きる。
その模様はテレビでも中継されているのだが、その場所には夫と子供がいるはず。
急いでスタジアムへ向かうが、事件の衝撃の大きさで自分自身も負傷してしまう。
その後は情事を重ねた男を受け付けない、彼と会うと事件を思い出すのだ。
男は未練いっぱい、彼女のために事件の事を必死に調べる。
すると報道されていない幾つかの事実が解明される。
犯人の目星はついていること、事前にテロ事件の情報を警察が掴んでいたということを。
この辺から知られざる事実が次々と現れ期待していたサスペンスがヒートアップしていくと思いきや
思いっきり裏切られた。


彼女は犯人の息子に近づき仲良くなる。
きっとこれには魂胆があるはず、子供から犯人である父親との接触が有るのだろう、と。
たがこの展開からあったものは、警察官に撃たれそうになった子供を身をもって助けたというもの。
次は夫の同僚から警察が事前に事件を想定していたが
想像以上の規模のテロだったと明かされたシーンから、
これからきっとテロ事故対策に対する警察内の内部告発的な展開になるのかと期待したら、
それ以上の発展はなし。

遂に若妻は精神が錯乱しビルの屋上から飛び降りるのかと思わせるシーン。
そこで、彼女はお腹に胎児宿っている事を感じ、思いとどまる。
最後の最後のシーン、赤ちゃんを抱える母親、遠くからその姿を見守るゴシップ記者。
ハッピーを感じさせるエンドだ。

平和をテーマにした作品で、
こっちの期待は まるっきり無視されてしまった。
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by asat_abc | 2011-02-05 14:41 | 映画_新作