「サラの鍵」の悲劇

これは去年の暮れに観た映画です。
この映画、「サラの鍵」は文科省推薦とテロップが入りそうなくらい
健全で道徳的で最後にはそれなりにハッピーに終わってくれる
心あたたまる映画に思えるようでいて、
実は物語の中核に据えているユダヤ人姉弟へは
かなり冷たい結末を用意している映画なんですよ。
終戦記念日頃に日本でも戦争の悲惨さを忘れないようにと
毎年毎年戦争を題材としたドラマや映画が作られるけど、
ヨーロッパでもナチスの残虐を忘れないようにと、
このような映画が毎年作られているのでしょう。
これといった目新しさはないものの 硬質の高水準のドラマ が
また一本出来上がりました、という印象で受け止めました。
物語のメッセージは、戦争は人々を不幸にする!! この一言につきます。
このメッセージを手を変え品を変え繰り返し繰り返し伝えています。
このメッセージが滞り始めるとまた不穏な時代に突入するのでしょう。
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物語はあるユダヤ人一家が強制収容される際に
小学校低学年ぐらいの姉が五才ぐらいの幼い弟を
家のクローゼットに隠したままにしてしまいました。
数週間後に姉が命からがらアパートに辿り着き、
そのクローゼットで見たものは。。。
ものがたりは、現代にそのクローゼットのあるアパートを手に入れた女性が
あるきっかけでその少女の消息をたどることになります。
その女性を道先案内人として、
少女の生涯を辿ってゆく というストーリーです。

映画冒頭すぐに、家族は突然収容所へ連れて行かれます。
その時機転を利かせた姉は弟をクローゼットに隠します。
その時 母も黙認、その時は良い選択だったはずです。

仮の収容所に連れて行かれ、とても直ぐには帰してもらえないと知った家族は
弟の事でもめ始めます。お父さんは娘をなじり始めます。
そんな事いったら駄目だよ、お父さん! そんな気持ちにさせられました。

親子三人バラバラの収容所へ送り込まれ、その中で姉は弟の為に必死に抜け出そうとし、
とうとう仲間と脱出、親切な老夫婦の住む民家に辿り着きます。
その家のおじさんと彼女が住んでいたアパートへ行って、
弟がいるはずのクローゼットを開けてみると。。。
姉の金切り声とクローゼットがあけられたのがわかるシーンが映しだされます。

不憫に思った老夫婦は彼女を養女として育てます。
寡黙だが、優秀で芯のしっかりした性格の美人に成長した彼女は
成人すると家を出て直ぐに連絡を絶ちます。
恩は充分過ぎるほど感じているものの、
過去を断ち切りたかったのでしょう。
その後彼女はアメリカへ渡り素敵な恋をして子供を一人産みますが、
幼い頃のトラウマが幸せになることを許しません。
結局彼女は幸せな人生をまっとう出来ず、
息子も本当の母の生き様を知らずじまいだったのです。

弟を殺してしまったというトラウマの為に彼女は
自分の幸せを許す事が出来なくなってしまったのです。

それもこれも全てはナチと戦争が作り揚げた不幸なトラウマのせいなのです。
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by asat_abc | 2012-04-05 23:58 | 映画_新作
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