「小川の辺」、藤沢作品に東山紀之が登場

映画化された藤沢作品で一番気に入っているのは
真田広之、宮沢りえ主演の「たそがれ清兵衛」。
どうしてもその作品と比較してしまうので、
評価は辛くなってしまうが、
決して悪い出来ではない、評価の厳しい友人も
良かったと言っていたぐらいだ。
ただ、胸に迫るもうひと押しが足りない。

私の評価の基準が
「たそがれ清兵衛」で
あがってしまったせいだと思うのだが。

c0146834_045514.jpg

海坂藩士、戌井朔之助(東山紀之)は藩命をうける。
藩の方針を痛烈に批判し、脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討てと。
佐久間は朔之助にとっては剣のライバルで、親友だ。
その上、妹の田鶴(菊地凛子)の夫でもある。
一度は家老の要請を断ろうとしたものの、
佐久間を討つほどの腕前を持つものは朔之助以外にいない。
義理の武士社会、複雑な心境だが、藩命とあらば受け入れざる得ない。
朔之助には懸念する事があった。
気が強く、剣の腕も立つ田鶴の事、
夫が討ち取られた後、刃向かって来るだろうと。
奉公人の新蔵を伴い
佐久間を討つ旅に出る。
新蔵(勝地涼)は幼い頃から兄弟同様に育てられて戌井家に仕えている。
田鶴との間にも浅からぬ関係があった。
勝ち気な彼女は何かと兄にぶつかってしまい、
それを必死になだめ彼女を助けるのが、新蔵の役目だった。
その三人の子供の頃の関係を示すシーンとして小川の辺のシーンがある。
ただこのシーン、良い設定なのだが、文句をつけたいところが一つある。
子役の子、東山にまるっきり似ていない、
いくら子役といえども、あれはひどすぎる。
もう少し、面影の似ている子役を使って欲しかった。

旅の途中、朔之助と新蔵そして田鶴との思い出話や
親友森衛が藩政を批判した理由が明らかにされていく。
現代なら何も問題視する事はない事ばかりだ。
そして朔之助に同行を願い出た新蔵の理由が浮き彫りにされてくる。
新蔵は愛する田鶴が兄の朔之助に刃向かってくることが無いように、
あるいは夫のあとを追って自害する事のないように、
その後の田鶴の事だけを考えていたのだ。
好きで好きでたまらないのに、
身分社会のこの時代では自分の思いを
伝える事が出来なかった。
相思相愛なのに嫁いで行く田鶴を
見送る事しか出来なかった。
そんな想いを胸に抱き新蔵は朔之助の供をしていた。

そんなふたりが見つけた佐久間の隠れ家は
小川の辺だった。

c0146834_0452744.jpg


この時代のエリートだというのに
何故殺し合わなければならないのか
などという事を二人とも考えようともしない、
そんな思想教育は怖いばかりだ。
疑問も差し挟むことなく、二人は戦った、
結果紙一重の差で朔之助に軍配があがり
その場を立ち去ろうとした時、
田鶴が戻ってくる。
予想通り刃向かってくる。
すると、新蔵の様子がおかしい、
義理よりも愛情を取ろうとし、
田鶴を助けようとする。
それを感じ田鶴の方も心の奥底で何かが動く。
そして、刃向かうのを止める。

二人して江戸にでも出て暮らせと言い残し
朔之助は立ち去る。
彼は昔から二人の気持ちを察していたのだろうし、
田鶴が刃向かって来ることも想定していたのだから、
自分が勝った時の解決策も考えていて
それで新蔵の供をしたいという申し出を
直ぐに引き受けたのかも知れない。

連れ帰ったところで
ギクシャクした感情をお互い持つよりも
自分に素直に第二の人生を始めた方が良いに決まってる。


思い返してみると色んなな含蓄が詰まった映画だった。
けっこう良く練られた作品だ、パンフレットを買わなかったが。
[PR]
by asat_abc | 2011-08-09 20:06 | 映画_新作
<< 「モールス」、クロエ・グレース... 「大鹿村騒動記」、原田芳雄さんの遺作 >>