「大鹿村騒動記」、原田芳雄さんの遺作

先日亡くなった原田芳雄さんの最後の作品
今思えば映画の中での動き
幼い頃から知っている原田さんの動きでなかった、
ぎごちない気がした、
それは彼の老齢になれば誰もがそうなるのだろう、
などと自分を納得させながら観ていた。
原田さんきっと体中、満身創痍だったんだろうなぁ。
昔のワイルドだったイメージからかけ離れ
好々爺とした良い人を演じていた。

題材の歌舞伎というのも
もう一つ映画に溶け込んでいなかった。
作品的には決して押せるものではないが、
この映画を作っていた阪本順治監督はじめ
出演者の人たちはきっとこれが
名優 原田芳雄の遺作となると思いながら、
いつも以上にこの名優と 映画作りをしていたのだろう、
その意味でこの映画の持つ価値は違ったものになる。


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大鹿村で食堂を経営する原田演じる主人公、風祭善は
むかし、妻の貴子と親友の治に駆け落ちされた過去を持つ。
その二人がひょっこり、
村行事の歌舞伎の頃に戻ってくるところから物語は始まる。
戻ってきた元妻、貴子は
脳の疾患をわずらっていて過去の事をきれいに忘れていて、
善と治を混同している。
人間誰しも都合の悪いことは忘れてしまうように出来ているのだろう。
元妻貴子役を大楠道代が、
駆け落ち相手で親友の治役を岸部一徳が演じる。
二人とも百戦錬磨の芸達者な俳優さんだ。
本来ならシリアスなところを、
ボケをかましながらコミカルに演じてくれる。


劇中の村行事、大鹿村歌舞伎は、実在するもので
三百年以上続く伝統のあるものらしい。
村人たちを結ぶ大切な伝統行事だ。
村はリニアモーターカーの用地問題という もめ事をかかえ、対立していたが
この村行事でなんとかまとまっている。
それぐらい求心力のある格式ある祭事なのだ。

貴子もむかしは善と一緒にこの歌舞伎に出ていた。
今は年寄り達が中心となってこの行事を進めているが、
戻って来た無邪気な貴子と家で生活するうちに
花形役者の善の心は揺れ動く。
そんな折りもおり、台風がやってきて、
貴子が突然姿を消す。
駆け落ちした日も嵐の日、
嵐がきっかけとなって記憶が蘇ってきたのだ。
それで居たたまれなくなって、家を出ようとしたのだ。
そんな一波乱を経ながらも、
村行事の歌舞伎の日はやって来た。
演じる善をみているうちに貴子、ボソッと一言、善に話し掛ける。
「許してくれなくていいのよ」
その言葉を聞いて
善の中で揺れ動いていた何かが落ち着く。
もうお互い若くない、なるようにしかならない、
許してしまおう、そう、思ったのだろうか。

次の日、貴子はやっぱりボケた貴子になっていた。



鑑賞後、二人連れのおばぁさんの会話。
「面白かったわね、来て良かったわよね」

わかる人にはわかる、
原田芳雄さんのファン必見の作品なのですよ、ね?

原田さんを追悼したいというかたは、是非見てください。
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by asat_abc | 2011-08-06 19:55 | 映画_新作
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