「八日目の蝉」、井上真央と永作博美の宿命

直木賞作家、角田光代原作の母性をテーマにしたヒューマンサスペンスドラマ
出演者c0146834_23513184.jpg
野々宮希和子/宮田京子:
永作博美
秋山恵理菜/宮田薫:
井上真央
安藤千草:
小池栄子
秋山丈博:
田中哲司
秋山恵津子:
森口瑶子
沢田久美:
市川実和子
エンゼル:
余貴美子
恋人の岸田:劇団ひとり

監督は成島出、「孤高のメス」がある。147分、2011年制作、東宝映画



本当の母よりもっと素敵な女性を母と信じたばっかりに、
母性を感じれなくなった女性が自分の生い立ちと向き合うことによって、
閉ざされていた自分の母性を解き放つまでのヒューマンドラマだ、
と思った。


野々宮希和子は堕胎する。。
産みたかったのだが、恋愛の相手、秋山には妻がいる。
将来の約束を匂わす秋山の説得によって泣く泣く子供をあきらめたというのに、
秋山の妻は、子供を産んだのだ。
雨の日、脱力感を感じながら秋山の家の前をさまよっていると
夫婦は子供をおいて車で出掛ける。
無意識に秋山の家に押し入ると子供の泣き声がする。
子供のところへ行き思わず抱き抱えると、純真無垢な笑顔がかえってくる。
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その瞬間、赤ん坊は希和子の子、薫になったと思えたのだ。
希和子は薫を抱え、知り合いのところを転々とする。
ようやく、沢田久美を介し、、エンゼルホームに転がり込む。
教祖のエンゼルが作った、
女だけが住む駆け込み寺のようなところだ。
だがそこにも別件で警察の手がのびてきて、
沢田久美の実家のある、小豆島へ落ち延びる。
そこで、薫との幸せな毎日を送っていくのだが。。。
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このドラマはNHKでも壇れい、北乃きいのキャスティングで放映された。
そのときは、都合の良い時、すこしだけ見ただけだが、
壇れいほどの器量の持ち主ならば目立ってしまい
直ぐに見つかってしまうだろうに、などと思ったのを覚えている。
そして、映画にしてくれれば良いのにと思ったのを記憶している。

映画では永作博美が希和子を演じ、
秋山の妻 森口瑶子とのコントラストが秀逸で
薫が心を閉ざした女になった理由が良くわかった。
永作が上手いのは言葉より観てもらった方が良いのでここでは語らない。
永作の薄幸そうな顔立ちと我が強くワガママそうな森口の顔立ち、
子供に全てをかける希和子に対し、
ブライトを全面に押し出し自己主張する秋山の妻、
薫が母の恵津子に
「お星様の歌うたって」、というと
きらきら光る。。。と歌う、
薫が「この歌じゃない」、と控えめに言うと
恵津子は考え、違う歌を歌う。
「それも違う」というと、突然感情を高ぶらせて激高する恵津子。
森口さん、上手い!

もっと絶賛したいシーンが あった。
恵理菜が子供を産む為の資金を秋山家へ借りに行ったシーンだ。
感情の高ぶりを娘にぶつけつつ、
どうしても我が子へ愛情を注げなかった、
どうしても娘の影に希和子を見てしまう自分に対して
慟哭するシーンだ。
森口さん、これからはこの路線だ!
イジメ役、敵役がぴったりだ!

主人公が引き立つには良い敵役が必要だ。
その敵役を見事に演じてきっていた。


薫が希和子との関係を見直すキッカケを作った千草役は小池栄子だ。
画面に出て来た時、変な違和感を感じた。姿勢が変なのだ。
良くある演技過剰かな?と思ったが、徐々に千草の正体が明らかにされ
なるほど、だから社会へ適合出来ず、不自然なんだ、なるほどと納得した。
小池栄子さん、もう立派な女優さんですねと
感心させられてしまった。

物語の原因を作った秋山丈博役だが、
この映画では目立ち過ぎてはいけない。
陰の薄い人が似合うので田中哲司になったのだろうが、
森口瑶子演じる美人の妻ばかりか、
希和子までたらし込む器量が伝わって来なかったのは、残念だ。



映画は
馴染めない両親の元から飛び出し、一人暮らしを始めた井上真央演じる恵理菜のところへ
フリーのライターをしている千草が現れたことにより
現在の恵理菜と過去の薫とを行き来しながら進んで行く。
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現在の恵理菜は愛するという感情を持てず、自分の方から積極的にアプローチ出来ず、
自分の事を好きだと近寄ってきた岸田とズルズル関係を続けていた。
だが、岸田は妻子持ちで、不倫だ。
そんな関係に悩んでいた時に千草が現れる。
そして、自分を誘拐したものの愛情深く育ててくれた宮田京子を回想する。
京子は東京から西へ逃げ延びエンゼルホームを経由して小豆島へたどり着く。
エンゼルホームを脱出する際、山道の暗闇をこわがった薫を勇気付けて
歌ったのが、この歌だ。

見上げてごらん 夜の星を
 小さな星の 小さな光りが
 ささやかな幸せを うたってる

 見上げてごらん 夜の星を
 ぼくらのように 名もない星が
 ささやかな幸せを 祈ってる

 手をつなごう ぼくと
 追いかけよう 夢を
 二人なら 苦しくなんかないさ

 見上げてごらん 夜の星を
 小さな星の 小さな光りが
 ささやかな幸せを うたってる

 見上げてごらん 夜の星を
 ぼくらのように 名もない星が
 ささやかな幸せを 祈ってる

薫は瞬間的に、この歌が大好きになったのだろう。

たどり着いた小豆島、そこでの生活が薫にとっても最良の幸せだったのだ。
その事を思い出した時に恵理菜と薫とが一体化し、
お腹の子に猛烈な母性を感じ始める。



深く深く心に染みる、今年一番の邦画の予感を感じました。
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by asat_abc | 2011-05-18 22:37 | 映画_新作
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