「ヴィニョンの妻」、松と広末の女の闘い
太宰治の小説は殆ど読んでいる筈なのに、覚えているのは、健全過ぎるテーマで嫌悪感を感じた「走れメロス」と不健全さに甘い誘惑を覚えた「人間失格」だけで、「ヴィニョンの妻」のことが思い出せない。思い出せるのは新潮社の黒のカバーに白地の題名だけ。ようやく思い出したのは最後のところだ。主人公大谷がさくらんぼを手にし、女将さんが子供にやってくれとくれたさくらんぼを、この貧しい父はこうやって食べている、と妻につぶやくシーンだ。子供にあげるべきおやつを自分でたいらげる父親切ない気持ちがとても記憶に残っていた。
冒頭のクレジットは 松たかこ、浅野忠信、妻夫木聡、堤真一。 この映画は松たかこをめぐる三人の男達の物語なのだ。 松たかこ演じる小説家大谷の妻の姿が清々しい。淡々と一見平板のようなストーリーの中に人間心理の深い洞察が隠されており、それなりの人生経験を踏んだものにしか味わえない趣がある。
by asat_abc
| 2009-09-30 06:45
| 映画
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